近刊のご案内です。
『ボクシングと大東亜 〜東洋選手権と戦後アジア外交』(乗松優・著/四六判上製320ページ/本体2200円+税)が間もなく出来上がります。
鉄道王・小林一三の実弟にして「聖地」後楽園を率いた国粋主義者、
稀代のフィリピン人興行師と共に暗躍した元特攻ヤクザ、
キリスト者として平和の架け橋となった最強の東洋王者、
メディア王・正力松太郎、そして昭和の妖怪・岸信介など、
テレビ史上最高視聴率96%を記録した戦後復興期の
プロボクシング興行の舞台裏で
見果てぬアジアへの夢を託して集った
男達の実像に迫る、〈もうひとつの昭和史〉ともいえる作品です。
著者の乗松優(のりまつ・すぐる)氏は1977年、愛媛県松山市生まれ。
九州大学大学院比較社会文化学府修了。博士(比較社会文化) 現在、関東学院大学兼任講師。
関係者の証言や資料をもとに、大戦中100万人以上が犠牲となった
フィリピンとの国交回復をめぐる葛藤と交流の軌跡を描いた力作です。
以下が目次です。
序 章 忘れられた栄光
第一章 「帝国」の危機とスポーツ
一 ボクシングを通じた「東洋」の再編
二 大日本帝国体制下の東亜競技大会、極東選手権大会
三 大英帝国を「延命」したコモンウェルス・ゲームズ
第二章 日比関係はいかにして悪化したか?
一 反日感情の源泉
二 占領政策の失敗
三 悪化する対日感情
四 「大東亜」の死と再生
第三章 興行師たちの野望とアジア
一 大東亜共栄圏なき時代の「東洋一」
二 ロッペ・サリエル――アジアをつないだ希代の興行師
三 瓦井孝房――周縁に生きる顔役
第四章 テレビ放送を支えた尊皇主義者
一 テレビ時代の幕開け
二 日本テレビの目論見
三 田辺宗英――聖地・後楽園を率いた憂国の士
四 勤皇・愛国主義の再生
五 ライオン野口と愛国社――大統領に招かれた国粋主義者
第五章 岸外交における露払いとしての東洋チャンピオン・カーニバル
一 東南アジアへの回帰
二 岸外交、二つの課題
三 外貨不足とカーニバルの開催
第六章 ボクサーにとっての東洋選手権
一 越境したボクサーたちの思い
二 金子繁治――ボクサーとして、キリスト者として
三 矢尾板貞雄――忘却された「棄民」との邂逅
四 勝又行雄――植民地文化の基層へ
第七章 戦後ボクシングと大衆ナショナリズムの変容
一 科学技術と戦後日本
二 白井義男――「日米の合作」によって生まれた日本初の世界王者
三 アメリカの代理人としてのフィリピン
四 「科学的ボクシング」への道
五 沼田義明と藤猛――「国産」チャンピオンの誕生
終 章 「大東亜」の夢は実現したか?
年表
巻末資料 渡辺勇次郎遺稿「廿五年の回顧」
解説 渡辺勇次郎とその時代
◎主な登場人物
[ボクサー]
ライオン野口、ピストン堀口、白井義男、金子繁治、フラッシュ・エロルデ、サンディ・サドラー、ダド・マリノ、勝又行雄、沼田義明、藤猛ほか
[興行師・トレーナー・政治家]
田辺宗茂、眞鍋八千代、正力松太郎、ロッペ・サリエル、ジョー・イーグル、瓦井孝房、野口進、児玉誉士夫、小佐野賢治、岸信介、レイ・アーセル、サム一ノ瀬、スタンレー・イトウ、ラルフ円福、カーン博士、エディ・タウンゼント、中村信一ほか