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画・甲斐大策

中村哲 思索と行動[下]

「ペシャワール会報」現地活動報告集成 2002〜2019
中村哲 ペシャワール会・発行/忘羊社・発売
本体:2700円+税 *A5判上製/456ページ+グラビア16ページ

荒れ果てた大地に平和と緑を。 人と人、人と自然の〈和解〉を目指す 新たな挑戦が始まった―。
40年に及ぶ戦乱と地球温暖化に伴う大干ばつ。どこにも逃げ場のない人々が自給自足できるように、井戸を掘り、用水路を造っていくが、次々に試練が襲いかかる…。アフガンの片隅から、自然への畏敬と相互扶助の精神を忘れた〈近代〉に警鐘を鳴らす渾身のメッセージ。(上巻は創刊準備号〜70号までを収録/上巻は2023年刊)

「アフガニスタンで起きた出来事から今の世界を眺めるとき、世界は末期的状態にさしかかっているようにさえ見えます。無差別の暴力は過去の自分たちの姿です。敵は外にあるのではありません。私たちの中に潜む欲望や偏見、残虐性が束になるとき、正気を持つ個人が消え、主語のない狂気と臆病が力を振るうことを見てきました。このような状況だからこそ、人と人、人と自然の和解を訴え、私たちの事業も営々と続けられます」 (第132号「2016年度報告」より)

目次

アフガン国境にて ―近代への批判

●71号(2002・4)
◎激動の2001年度を振り返って
破壊と援助の連鎖を排す
●72号(2002・7)
◎カブールの全プロジェクトを撤収
復興援助の傲慢を思う 2001年度現地事業報告
●73号(2002・10)
「緑の大地計画」試験栽培スタート
●74号(2002・12)
 悲憤超え、希望を分かつ―—オキナワ平和診療所、来春完成へ
●75号(2003・4)
 実事業をもって平和に与す―—アフガン東部で15年計画の水利事業開始
マルワリード用水路起工式挨拶
●76号(2003・7)
病と争いの根幹に楔を打つ―—2002年度現地事業報告
●77号(2003・10)
平和を耕すPMS——灌漑用水路は年内6㎞完了、「オキナワ平和診療所」開所
●78号(2003・12)
混乱の政情下、水利事業は総力戦へ——用水路建設のべ五万人動員、取水口工事は今冬完了
米軍ヘリ誤射事件関連資料
●79号(2004・4)
難工事乗り越え、用水路ついに通水——用水路は取水口周辺の工事を完了、3月7日一部通水
●80号(2004・7)
◎帰還難民増加に備え、用水路は最難関の工事を開始
進まぬ復興、遠のくアフガン 2003年度現地事業報告
●81号(2004・10)
◎イーハトーブ賞受賞に寄せて
わが内なるゴーシュ―—愚直さが踏みとどまらせた現地
●82号(2004・12)
悪化する治安と風紀、病院へ大きな余波——灌漑用水路は5㎞地点を掘削中
●83号(2005・4)
◎灌漑用水路は第2次通水、ついに田畑への灌水開始
失望と希望のアフガン復興 ——アフガン国内二診療所、政府へ委譲
●84号(2005・6)
第一弾500ヘクタールの灌漑始まる―—2004年度現地事業報告
朗報砂漠が水郷に!
●85号(2005・9)
◎30年に一度の洪水と集中豪雨
自然の恐ろしさも、恩恵も思い知りました
●86号(2005・12)
◎用水路は9㎞地点、600ヘクタールの灌漑達成
甦る緑の大地
●87号(2006・4)
第2次灌水目前、現場には活気が漲っています
●88号(2006・6)
悪化する情勢をよそに、用水路は1500ヘクタールの灌漑を達成―—2005年度現地事業報告
●89号(2006・9)
戦争以上の忍耐と努力——天・地・人の壮大な構図の中で実感
先入観を克服していかに虚心になりうるか―—『丸腰のボランティア』(まえがき)
●90号(2006・12)
いのちを尊ぶ気持ちに国境はない―—今冬の作付けを決する緊急送水に目途
●91号(2007・4)
4年越しの悲願、用水路第1期13㎞、遂に完成——3月15日、通水の祝典を挙行
●92号(2007・6)
◎用水路は第2期6.8㎞の工事を開始
守るべき人間としての営み―—2006年度現地事業報告
●93号(2007・10)
診療の拠点をアフガニスタンに―—PMS基地病院は11月までに全面移転
●94号(2007・12)
迫り来る大凶作——基地病院移転は半年延期、既存水路の救済が焦眉
●95号(2008・4)
マルワリード用水路はガンベリ沙漠へ到達——地域復興の要、マドラサ建設に協力
●96号(2008・6)
◎第三期工事は「沙漠緑化」と「農地開拓」
自立定着村の創設に向けて―—2007年度現地事業報告
●現地ワーカー 伊藤和也さん追悼号(2008・9)
寡黙な実践以って伝えた「平和」
●97号(2008・10)
「緑の楽園」、実現への最終工区へ―—故・伊藤和也氏と農業計画の成果が沙漠を緑に
平和こそ追悼、事業の継続を誓います―—現地追悼集会での弔辞
●98号(2008・12)
終末を思わせる今こそ25年の成果を――用水路第3期工事とともに沙漠の植樹と寺子屋建設に着手
◎2008度上半期報告
用水路・農村復興事業は最終段階——マドラサは来春開校予定
●99号(2009・4)
広がる耕地、希望集める開拓村——瀬戸際での既存水路復旧が奏功、総灌漑地は約1万4千ヘクタールに
●灌漑用水路完成間近特別号(2009・5)
ここにこそ動かぬ平和がある―—用水路は現地活動25年の記念碑
●100号(2009・7)
国境や政治・宗教を超えた結実——2008年度現地事業報告
●101号(2009・10)
用水路に「開通」はあっても「完成」はありません―—突如襲う集中豪雨との激闘、里人との軋轢
●102号(2009・12)
1万4千ヘクタールの〝オアシス〟——PMSはピース・ジャパン・メディカル・サービスに改称
●103号(2010・4)
25.5㎞完工、開拓作業に着手——用水路完工式、モスク・マドラサ譲渡式挙行
長い努力の結果、あなた方の手でできたのです―—マルワリード用水路完工式挨拶
●104号(2010・7)
◎マルワリード用水路全線開通
地元農民の生存を懸けた働きと日本の良心の証——2009年度現地事業報告
●105号(2010・9)
旱魃の中、100年に一度の大洪水——今秋より取水口の大改修
アフガン東部における水事情と灌漑の重要性
●106号(2010・12)
大洪水の後始末はこの春までが勝負です―—同時進行の大工事と自然の恵み
●107号(2011・4)
自然の定めの中で人が生き延びる術——カマ第2取水口通水、ベスード護岸4㎞
東日本大震災で被災された方々へ
●108号(2011・7)
人間と自然との関係が大きく浮き彫りにされた1年間——2010年度現地事業報告
●109号(2011・10)
死の沙漠は緑の楽園に―—河川工事も沙漠開拓も佳境に
緊急報告 ケシュマンド山系に記録的集中豪雨
●110号(2011・12)
人と和し、自然と和することは武力に勝る力——平和とは理念でなく、生死の問題
●111号(2012・4)
因縁のカシコートで取水堰準備工事を開始——人の温かさこそが、かろうじて世界の破局を防ぐ
●112号(2012・7)
自然とは人の命運をも支配する摂理——2011年度現地事業報告
●113号(2012・10)
目的と精神は変らず、「生命」が主題です―—時流に乗らない心ある人々の思いに支えられ
●114号(2012・12)
「緑の大地計画」の天王山——私たちを支えるのは人の温もりと和やかさ
●115号(2013・4)
マルワリード=カシコート連続堰、完成の目途——推定65万人が安心して暮らせる土地に
●116号(2013・7)
天・地・人の構図の中で「自然と人間の関係」を問い続ける―—2012年度現地事業報告
●117号(2013・10)
たびたびの大洪水の中、最大懸案のカシコート安定灌漑に見通し
「精神と道義の貧困」が蔓延する世界の中で―—福岡アジア文化賞(大賞)授賞式でのスピーチ
遠くの髙松先生へ―—第2代会長髙松勇雄先生を悼んで
●118号(2013・12)
シギ堰取水口消失、カマⅡ堰全壊——重圧の中で黙々と復旧作業
●119号(2014・4)
連続堰の完工、両岸の安定灌漑を保障——名状しがたい焦燥の中での用水路工事
●120号(2014・6)
滅びは「文明の無知と貪欲と傲慢」による―—2013年度現地事業報告
●121号(2014・10)
アフガン東部の干ばつの現状と対策——東部アフガン農村から見る一考察
●122号(2014・12)
食糧危機とオレンジの花——PMS・住民・行政が一体となって体当り工事
●123号(2015・4)
人と自然との和解を問い続ける仕事——ミラーン堰の建設と新シギ堰の完成
●124号(2015・7)
戦や目先の利に依らずとも多くの恵みが約束されている―—2014年度現地事業報告
●125号(2015・9)
「広域展開」の準備、着々と進む―—復興モデルの完成と訓練所の開設
●126号(2015・12)
今こそ、この灯りを絶やしてはならぬ―—技術を絶対視せず、忍耐を重ねて自然と共存
●127号(2016・4)
飢饉が確実視される中、PMS作業地では作物の増産——ミラーン堰は事実上完成、ガンベリ農場は合法的所有地に
●128号(2016・7)
「緑の大地計画」を仕上げ、他地域にも希望を―—2015年度現地事業報告
●129号(2016・10)
今秋から広域かつ大規模な事業展開——「緑の大地計画」の仕上げ、ミラーン堰対岸工事と研修所の設立
●130号(2016・12)
事業は氷河の水が絶えるまで続きます―—予定を前倒しで「緑の大地計画」完遂急ぐ
●131号(2017・4)
パキスタンからの送還難民100万人、今こそ最も支援が必要な時
●132号(2017・6)
「20年継続体制」に向けて―—2016年度現地事業報告
●133号(2017・10)
朝倉の豪雨災害とアフガニスタン——「故郷の回復」、これが国境を超える共通のスローガン
●134号(2017・12)
干ばつに追い打ちをかける戦火——着工から15年、マルワリード用水路実質完工
●135号(2018・4)
「生きた模型」カマⅡ堰の改修完了——難民の帰農を目指し緊急突貫工事
◎中村医師、アフガニスタン大統領より勲章
この叙勲がさらなる協力の輪に
◎水のよもやま話(1)ザムザムの水
●136号(2018・6)
干ばつと戦乱が収まらない中、人の和を大切に力を尽くす―—2017年度現地事業報告
◎水のよもやま話(2)河と文明——スランプールの水と金貨
●137号(2018・9)
温暖化と干ばつと戦乱は密接に関連——絶望を希望に変えるPMS方式の普及活動
◎水のよもやま話(3)クナール河と河童
●138号(2018・12)
深刻化する沙漠化と豪雨の中、灌漑地が唯一の希望に
◎緊急報告アフガニスタン、空前の規模の食糧危機
●139号(2019・4)
悲願の山田堰モデル、完成へ―—9年の試行錯誤を経てカマ堰完工
◎水のよもやま話・番外 飢餓の国vs飽食の国
●140号(2019・7)
植樹100万本達成!——2018年度現地事業報告
◎水のよもやま話(4)「治水」と「洪水制御」——東洋における水
●141号(2019・9)
「緑の大地計画」を希望の灯に―—農地を回復する動きが本格化
用水路と女性たち——過酷な労働と感染症からの解放
●142号(2019・12)
凄まじい温暖化の影響——とまれ、この仕事が新たな世界に通ずることを祈り、来たる年も力を尽くしたい
◎中村医師、アフガニスタン名誉国民証を授与される
「これがアフガニスタン復興のカギ」
◎名誉国民証受証後のメッセージ
絶望的な状況の中、人々の希望と国土の回復を目指す
◎水のよもやま話(5) 柳の話
追悼 緒方貞子さんの思い出
●号外(2019・12)
絶筆・信じて生きる山の民——アフガニスタンは何を啓示するのか

巻末資料1 中村哲医師からの最後の「週報」
巻末資料2 中村哲医師 ペシャワール赴任までの足跡
巻末資料3 中村哲医師の詩歌
巻末資料4 中村哲医師の著作・映像作品等

中村哲

1946年(昭和21年)福岡県生まれ。医師。PMS(平和医療団・日本)総院長/ペシャワール会現地代表。
九州大学医学部卒業。日本国内の病院勤務を経て、84年にパキスタンのペシャワールに赴任。以来、ハンセン病を中心とした貧困層の診療に携わる。86年よりアフガニスタン難民のための医療チームを結成し、山岳無医地区での診療を開始。91年よりアフガニスタン東部山岳地帯に3つの診療所を開設し、98年にはペシャワールにPMS基地病院を設立。2000年からは診療活動と同時に、大干ばつに見舞われたアフガニスタン国内の水源確保のために井戸掘削とカレーズ(地下水路)の復旧を行う。03年、「緑の大地計画」に着手、ナンガラハル州に全長27キロメートルに及ぶ灌漑用水路を建設。その後も砂嵐や洪水と闘いながら沙漠化した農地を復旧した。マグサイサイ賞「平和と国際理解部門」、福岡アジア文化賞大賞など受賞多数。19年10月にはアフガニスタン政府から名誉市民証を授与される。
2019年12月4日、アフガニスタンのジャララバードで凶弾に倒れる。
著書:『ペシャワールにて』『ダラエ・ヌールへの道』『医者 井戸を掘る』『医は国境を越えて』『医者、用水路を拓く』(以上、石風社)、『天、共に在り』『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(以上、NHK出版)『希望の一滴』(西日本新聞社)など。

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