「専門家でも権威でもない人々が、自然体で作り上げた社会福祉。
その姿を掬い取ってみたい」。
難病をもって生まれたわが子とともに
自宅で始めた宮崎の小さな福祉作業所。
いつか、子どもたちが自立して生きられるように、
「障害者だから」と言わせないために、
上からでも下からでもない目線で課題に向き合い、
いつしか全国から見学者が訪れるようになった
宮崎の社会福祉法人「いつか会」40年の軌跡。
【本書まえがきより】
「評判のいい、障害者の店があるので行かないか」。
記者クラブの仲間に誘われて二、三人連れだって訪ねた。県庁から歩いて数分。宮崎市橘通東二丁目のビル一階。「アンジュール」というレストランだった。(略)やがてあることに気づいた。子ども連れの母親たちがお喋りを楽しむ光景はどこにでもあるが、赤ちゃんや幼児たちが誰一人として泣かない。駄々をこねる姿もない。食器が触れ合う音まで心地よかった。(略)レストラン「アンジュール」の時間はゆっくりと流れていた。ゆっくり流れるのはどういう時間か。幼児が泣かないのはなぜか、気になった。
【著者】
井口幸久(いのくち・ゆきひさ) …… 1956年、福岡市生まれ。1980年東京商船大学(現・東京海洋大学)卒。同年、西日本新聞社入社。鹿児島総局、北九州支社、社会部、宮崎総局、文化部長、佐賀総局長等を歴任。2016年、退職の後は九州文化協会、福岡文化連盟事務局長を務めた。著書に『介護タクシーを知っていますか』(角川書店)、『小伝・弥勒先生』(西日本新聞社)、『石心 囲碁棋士・大竹英雄小伝』(石風社)、『絵描きと画材屋 洋画家・野見山暁治と山本文房堂・的野恭一の五十年』『陸に上がって記者になる』(以上、忘羊社)がある。




