〒810-0022 福岡市中央区薬院4-8-28 チサンマンション第5博多
電話092(406)2036 FAX092(406)2093
メール bouyousha@gmail.com
画・甲斐大策

WANDERERS

(ワンダラーズ)
中牟田雅央
本体:3000円+税 *四六判上製/96ページ ISBN978-4-907902-43-8

「住まいの在るところが故郷なのではない。
理解してもらえるところこそ故郷なのだ」
(Christian Morgenstern)

国内最大の“寄せ場” として、戦後ニッポンを支えた大阪・釜ヶ崎。
その町と人が発する強烈な磁場に惹かれた写真家が、
移り住んだ町・釜ヶ崎と生まれ育った町・福岡を往復しながら
四半世紀にわたって活写した、まつろわぬ人々の肖像。

【本書あとがきより】

 生まれ育った福岡、長く腰を据えている大阪。この二つの街は僕にとって特別な場所だ。

 以前はよくかな資金で国内外を問わずへ出かけて撮影し、福岡の暗室で現像処理をするのが習慣だった。

 当時、地元である福岡に目を向けることはさほどなかった。見慣れた環境の中に、対象を見いだすことが出来ていなかったからだ。継続して撮影していたのは大阪の。かつてここは、仕事を求めて全国からい労働者が集まる“寄せ場”と呼ばれたところで、今なお課題の多い地域である。ただ僕が関心を持ったのはその問題ではなく、複雑な環境下に生きる人たちのあり方だった。

 ある時、そのあらましを知る知人が「博多の市街地の外れにも近い雰囲気の場所がある」と教えてくれた。へ旅立つ資金も計画も無かったため、余ったフィルムをカメラに詰めて、試しに出かけてみることにした。街の色、荒廃した建物、妙な静けさ…。確かに以前、大阪で感じた空気感と重なり、好奇心が湧いてきた。歩き廻って気になる人物に声をかけると、返ってくるのはりの強い博多弁、それに個性的で主張のある。そこに“同じ匂いのする人間”がいるという感触に充足感を覚えた。何よりも地元で取り組めそうな題材ができたことが大きな喜びだった。

 そうしたことから大阪、福岡、両都市の敢えて目的がなければ通り過ぎてしまいそうな場所が、僕をきつける目的地となっていった。ただ、同じ景色の中に長く居ると、何に対して反応し、シャッターを切るべきか分からなくなってしまう。そうした時には二ヵ所交互に身を置くことで、彼らに共通する態度に改めて刺激されていることに気付くことができた。

 彩りの少ないモノトーンな日々の中に、ささやかな差し色を入れるような振る舞い、日常生活に対して少しでもユーモアや変化を加えるような試み。矛盾や不平を口にする立場にない僕が時に不満を感じているのに対し、それを主張する権利のある彼らは日々を受け入れ、積極的に過ごしている。

 多くの写真はそれぞれの都市の中でも、とりわけ裕福とはいえないに生きる単身の人々であり、華やかで物が溢れる消費社会とは対照的な陰として映りがちだ。けれど、何が必要で何が不要なのかを彼らは経験の中から見いだし、総じてせ失われつつある有用なモノを、むしろ変わらず保持しているように思える。それぞれが利己的ではない独自の価値観に従いながら生活することがであり、ではあるが、単純にそれが豊かさなのだと改めて思い知らされる。

【著者】
中牟田雅央(なかむた・まさひろ) …… 1979年福岡県生まれ。1998年大阪へ転居、その後ドキュメンタリー写真を撮り始め、週刊誌等で活動。主に日本とアジアを中心に撮影を続ける。写真集に『釜ヶ崎』(2017年、忘羊社)がある。

シェア