母なる大河は、惜しみなく奪っていった……
「日本三大暴れ川」の一つとして知られる大河・筑後川。
阿蘇・九重の源流から有明海まで、
治水と共生を続けてきた流域の
歴史・文化・生活を、
10年以上の歳月をかけて取材した労作。
「筑後川は、阿蘇と九重を源流とする九州最大の河川である。大分県、熊本県、福岡県、佐賀県と四県にまたがり…利根川、吉野川とともに暴れ川の〝三兄弟〟とされている。だが近年筑後川ほど洪水を繰り返した川はない。流域の人々はこの川の猛威とともに歴史を刻んできた。その中で人々が水の脅威にどう対処して生きてきたかを知ることは、河川とともに生きる人々の暮らしを見つめなおすことでもある。…筑後川は、九州に限らず日本全国の河川とともに暮らす人々にとっても同じ問いを投げかけている」(本書「プロローグ」より)
[目次]
プロローグ 「想定外」の時代に
第1章 暴れ川、筑紫次郎
第2章[上流編] 急流と生きる
美林の郷、小国
青木牛之助と千町無田の開拓者たち
急流と生きる
室原知幸と蜂の巣城闘争
ダムって何だ
変わりゆく九重
龍のいる川
鉄橋が流された!
第3章[中流編] 大いなる沃野へ
水都日田と三隈川
一〇〇年スパンの災害学
筏流しのいた時代
大石堰は美談か
原鶴と昭和の大水害
山田堰とアフガニスタン
河童の里、田主丸
藩境と水争い
川は古戦場
宮入貝と日本住血吸虫
筑後川と信仰
第4章 豪雨の爪痕
筑後川の水害史
西日本水害の記憶
第5章[下流編] 有明の海とともに
筑後大堰と有明海
クリークのある風景
渡し船 橋を架けられなかった時代
筑後川の〝アオ〟と城島酒
職人たちの矜持
近代の黎明と筑後川
有明海異変
澤宮優(さわみや・ゆう)
ノンフィクション作家。1964年熊本県生まれ。スポーツから歴史、民俗、文学まで幅広く執筆。『巨人軍最強の捕手』(晶文社)で第14回ミズノスポーツライター賞優秀賞。著書に『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』(角川ソフィア文庫)、『考古学エレジーの唄が聞こえる』(東海教育研究所)、『昭和の仕事』『集団就職』(ともに弦書房)、『戦国廃城紀行』(河出文庫)、『イップス』(KADOKAWA)『世紀の落球 「戦犯」と呼ばれた男たちのその後』(中央公論新社・第3回野球文化學會賞)『バッティングピッチャー』『昭和十八年 幻の箱根駅伝』(ともに集英社文庫)など多数。